研究概要 |
1.本研究にとって最重要なことは,親子契約とりわけ老親扶養に関する地方(村方)文書を多数収集することであった.なぜならこの種の契約証文は,すべて地方文書によってはじめて知ることの出来る性格のものだからである.しかし,関東地方とりわけ群馬県内を除いては,直接老親扶養の取り決めをした文書は江戸近郊の武州荏原郡のものを1通のほか若干のもの見いだしたに過ぎない.文部省史料館の森館長に面談の上,ご教示をいただいたが,江戸近郊の地方文書の収集が重要かつ主要な作業になることが判明した. 2.研究対象の1つである聟養子縁組証文については,群馬県文書館の資料検索からかなりの文書を収集することができた.実のところ,聟養子の選定は相当慎重になされたが,これは聟養子によって養親は自分の老後の面倒をみてもらおうとの期待があるからで,老親扶養の1方法でもあった.将来の紛争を回避するための離婚条項をあらかじめ契約している地域の存在も見いだすことができた.これらは主として群馬県史の写真資料であるために,掲載の要件である『ぐんま史料研究』誌上に発表することにした。 3.ほかに隠居証文や隠居面(免)証文,遺言書を収集した.隠居については,同居隠居,別居隠居,分家隠居など種々な事例を収集.隠居面については,一般史のジャンルで研究する方がいると考え,文献検索したが,全くなく今後とも収集を余儀なくされた.遺言書は死後の財産関係の清算ではあるが,関係者の連署加印が加えられることが多いので,結局,老後生活の自己決定であり,当初予定してはいなかったが,新たに収集を要することがわかった.
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