大規模開発に関しては、都市計画法による開発許可、森林法上の林地開発許可、農地転用許可のように、知事に開発許可権限が委任されていることが少なくない。しかし、多くの都道府県は開発指導要綱を制定して、その適正な開発の指導を行っている。ところで、指導要綱は、従来、「行政指導基準」と理解されてきたのであるが、都道府県の設定する要綱の中には、上記知事の許可権限の行使基準と見受けられるものがある。実務では指導と理解している場合が多いが、法律上の許可基準は一義的でないものが多く、法の趣旨や通達等による許可基準の趣旨と併せ考えると、要綱が知事の裁量権行使基準と理解できるものが少なくない。しかし、要綱の中には、現行法の趣旨や法体系からみて許可基準と解することはできず、あくまで指導基準と理解せざるを得ないものもある。関係法令の研究をすすめ、知事が設定できる許可基準の範囲・限界を考察することが今後必要である。 ところで、いくつかの道県では条例で開発許可制度を設けている。このような場合には、規則で詳細な許可基準を設定している場合が少なくない。しかし、かかる自治体でも、条例と併せてゴルフ場など特定開発行為に対する指導要綱を制定している。このような場合の指導要綱は、条例適用対象外の開発行為に対して1.で述べた機能と同様の機能を有することがあり、同時に条例適用対象開発行為に対する開発指導基準として機能している。県によっては、条例の許可基準と指導基準を一致させて運用しているところもあり、大規模開発に対する自治体としての統一的指導を進めているところもある。調査をしたところ、条例のよる規制が、自治体独自の規制基準を設定する点において要綱だけの自治体より優位性があった。
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