本研究は自治体のスポーツ振興行政の法的問題について、実証的な研究として広島アジア大会における法律問題及びドイツとの比較法的研究をめざした。 (1)ドイツとの対比:ドイツにおける問題点としては、結論的にはドイツでは、国家からの自由としてのスポーツが憲法問題として盛んに議論されているが、この点は、日本ではあまり議論されていない。我が国では、スポーツ事故に対する賠償問題が中心であるように思われる。 (2)広島アジア大会の独自性: (1)開催決定自身は、昭和61年閣議了解で政府承認されたが、運営資金は国からのいかなる負担・助成も行われないこととされた。すなわち、アジア競技大会は、オリンピックのように「都市」が開催するものではなく、OCA憲章により、あくまでNOC(国内オリンピック委員会)が開催する。広島大会の場合にはJOC(日本オリンピック委員会)が開催する。この点がオリンピックとの対比で際だった特徴点である。 (2)自治体の取り組みの特徴点としては、たとえば広島市の場合、一館一国・地域応援事業として、広島市の公民館がアジアの参加国の支援を分担したことが注目される。 (3)また、大会運営の特徴点としては、市民参加による大会運営が注目される。即ち、大会運営に携わる要員は、大会期間中、のべ18万人、全体の60%にわたる人数をボランチアとして県民・市民が参加したことが注目されよう。 (3)今後の課題:(1)広島の場合には直後に国体が開催されるが、大きな大会の後の施設利用計画が適正になされないと、自治体は赤字経営に陥ることは、ドイツも日本も共通に危惧されている。(2)日本では、スポーツはバラ色に描かれている。しかし、ドイツは、少しスポーツの熱がさめたのが、限界の問題も論ぜられている。(3)スポーツ振興における公共性の問題をなおいっそう検討する必要を感じる。アジア大会は国の援助なしに行われたという点では、地方自治の尊重という点では評価できるが、しかし、国民個人のレベルにおけるスポーツ自治の問題が今後いっそう強調・解明される必要があろう。
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