今年度の研究計画等については、(1) 外国文献の収集、(2) 選挙権要求運動の実態調査、(3) 選挙法制の構造分析をすることにあった。本年2月28日、最高裁第三小法廷は、地裁レベルでの新たな傾向を受け、一挙に定住外国人に対する地方選挙権の付与について、現行日本国憲法のもとでも禁止されておらず立法政策の問題であると判示した。 一方、地方議会での要請決議は二百自治体を越え、政令指定都市も二自治体に至っている。私のこの一年間の研究成果は、(1) ドイツの地方自治制度に関する現状分析とEC加盟国民に対する地方参政権容認のための憲法改正及び地方参政権保障理論の検討、(2) わが国における外国人の政党加入を契機とする外国人の政治活動の自由の分析・検討、(3) 外国人の地方参政権保障の具体化のための地方自治法及び公職選挙法の改正要綱案の分析・検討を行った。 以上の作業を通じて、外国人に対する参政権保障の程度と範囲、その限界をあらかじめ提示しておく必要に迫まられている。具体的には、(1) 選挙権と被選挙権に関するその範囲と在留資格等の問題、(2) その限界について国政レベルをも視野に入れ国民と区別される限界として、憲法改正国民投票権ぐらいまで考えておくことの必要性、(3) その際、参考とすべき「制約基準」として公務員任用の制約基準とされる「当然の法理」の合憲的運用をぎりぎりまでつめておくことの必要性、(4) 前提となる「参政権」の人権としての法的性格の分析、(5) さしあたり、自治体レベルでも条例等による具体的参政権保障の可能性と限界等について、今後の課題とするつもりである。
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