当初の計画通り、主題につき(1)内外の文献の収集、(2)選挙権要求運動の実態調査、(3)現行憲法体制下における選挙法制の構造分析について研究した。タイムリ-にも1995年2月、最高裁第三法廷は、地裁レベルでの新たな傾向を、一挙に定住外国人に対する地方参政権の付与について、現日本国憲法のもとでも禁止されておらず立法政策の問題であると判示した。一方、地方議会での要請決議は1000自治体に達しようとしている(96年1月現在)。 以上の研究成果に基づく、この問題の具体的研究成果は、(1)ドイツの地方自治制度に関する現状分析とEU国民に対する地方参政権承認のための憲法改正及び地方参政権保障法理の検討、(2)外国人の政治活動の自由の分析・検討、(3)地方参政権保障の具体的提言として地方自治法・公職選挙法の改正要綱案の検討、(4)敗戦直後における外国人参政権保障の「剥奪」過程の整理を行った。その結果、外国人に対する参政権保障の程度と範囲を設置する上で、あらかじめ参政権保障の限界や目やすを検討しておくことの方が論理的検討の便宜と考えるようになった。具体的には、(1)選挙権と被選挙権に関するその範囲と旧植民地出身者等を含め在留資格等の問題、(2)参政権保障の限界について国政レベルをも視野に入れる国民と区別される限界として、憲法制定権ぐらいまでを考えておくことの必要性。(3)その際、参考とすべき「制約基準」として公務員任用の制約基準とされる「当然の法理」(公権力の行使・公の意志の形成)の合憲的運用をぎりぎりまでつめておくことの必要性からしても、国民主権下における公権力の「直接」あるいは公の意思の「直接」の形成に関わる職務に限定すること、(4)自治体レベルでも条例等による具体的参政権保障の具体化が図られるべきことであること、(5)旧植民地出身者にとっては、敗戦直後の治安対象による「政治的動機」により参政権が剥奪されたこと等について分析検討した。
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