平成6年度における研究実績の概要は、以下のとおりである。 1.まず、予備的作業として進めていたドイツにおける理由付記制度(理由の補正と中心として)に関する研究については、判例部分の原稿作成を終了し(但し、連続ものであるため、掲載予定雑誌の都合上、掲載待機中)、引き続き学説を中心とする作業を進めており、これも近く原稿作成を終える予定で、公表する。 本題の行政手続法の制定と行政不服申立制度への影響については、ドイツの議論を中心として、資料作成を進めている段階である。現段階での作業成果からいえば、(1)ドイツでは憲法上連邦と州の立法権限が区別されるか、裁判手続については両者が競合し、連邦法の行政裁判所法が行政裁判手続を規律するが、行政手続については必ずしも連邦権限とされず、連邦法とならんで各州の行政手続法が定められている。一方、行政不服申立は法律上は連邦行政裁判所法で規定されるが、その実質は行政手続とみられ、そのために、自らの権限として行政裁判手続を規律する連邦行政裁判所法が必ずしも連邦権限に属しない行政不服申立(行政手続の一部)についても規律するという、パラドキシカルな状況が生じている。この状況は連邦制をとり、行政不服申立を行政裁判所法で規律するドイツに固有のものと考えられ、がわ国においては直ちに参考とならない。(2)しかしながら、それに起因する諸問題(例、不服申立手続の体系的位置づけ、行政不服申立手続への行政手続法の適用、行政裁判所法と行政手続法との関係、不服申立における関与人の法的地位など)においては、わが国にとっても参考となる議論が行われてきている。次年度では、これらの問題についてまとめを行い、もってわが国の問題を考える際の手がかりを得、さらに、わが国の問題についても考えて行くこととしたい。
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