平成6年度、引き続き平成7年度において、基本的に、(I)高齢者の人権(自己決定権・生存権など)についての比較憲法的分析作業、(II)日本における要介護高齢者の施設福祉システムの現状についての実態調査作業と理論分析作業、および、(III)本補助金交付を契機として申請者が設立した「家族と憲法・民法研究会」での発表・検討作業を行ってきた。 そして、高齢者の人権をめぐる憲法理論の現況と問題点については、論文「高齢者の人権と憲法学」、「年齢による区別の合憲性」として結実させ、人権基礎論、人権の実効的救済方法論という基本問題へと展開させていくための今後の研究の基礎を固めることができた。また、平成7年度半ばにしてとりわけ重要視されるに至った諸課題-成年後見制度、公的介護保険制度に関する基礎理論と具体的提言等-についても取り組んできた。もっとも、「世代間公平の原理」の法律学的分析もアメリカで比較的最近行われ始めたにすぎないこともあって、なお、比較法的検討を継続すべく、平成7年度末の時点ではこれらの諸論点については、未だ個別論文として公刊するに至っていない。今後、スェ-デン・ドイツ・アメリカなどの外国視察調査(本件科研補助金の対象外)の機会を得て、これらの諸点についても個別論文として完成したいと考えている。
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