平成6年度は、米国の政策のなかで競争法の域外適用、通商法による一方的手続および1994年GATTへの対応は密接に結びついていることを明らかにした。平成7年度は、さらに広く米国通商法の対外適用事例を検討した。管轄権の衝突と調整について、以上のような一方的または国内法的アプローチに続いて、平成8年度は、双方的、多方的または国際法的アプローチによって分析を行った。以上の研究の結果、次のことが明らかになった。 第1に、1994年以降、貿易を中心とする対外的経済活動の分野では、WTOが規律する分野が拡大したが、アメリカ合衆国は、自国法を自国領域外に適用してこれを規制する傾向が強い。この点は、後掲第1論文で詳述した。EU諸国においては、共通の規制ルールを設けている分野もあるが、構成国の国内法の域外適用で処理している分野がある。特に輸出管理および競争法の分野では、国際的なルールで規律しようとする試みはいまだ発展途上にある。 第2に、投資をはじめとする国内における外国人の経済活動は、伝統的に国内管轄事項として各国の規制にゆだねられてきた。しかし、通商条約やOECDなどの国際法的ルールによって、自由化が進展している。このような動きは、日本の行政機関による経済活動一般に対する規制の緩和という動きにつながっている。この点に関しては、後掲第2論文に成果を公表した。 第3に、これらの動きを総合すれば、貿易や投資などの分野では国際的な調整システムが広範にカバーするかまたは国際的コントロールによる自由化の進展がみられる一方で、輸出管理や競争法の分野では、国際的なアプローチが適用できず、従来の一方向・国内法中心的なアプローチが中心となるといえる。
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