1.平成6年度の当初計画のうち集合動産譲渡担保の効力についての個別的検討については、(1)集合動産譲渡担保の成立を正面から肯定した初めての最高裁判決である最判昭和62.11.10の問題点を明らかにした上で、動産の売買の際に利用される所有権留保と集合動産譲渡担保の効力の関係について検討を加えた。所有権留保の法的性質を代金完済時までは当該不動産の所有権は設定者に移転しないものと解すると、所有権留保動産の場合、それが集合物内に存しても、個別動産には集合動産譲渡担保の効力が及ばないと解さざるをえない。もっとも、その場合にも、集合動産譲渡担保権の善意取得が認められないかどうかについて検討の余地はあるが、占有改定による善意取得を認めない判例理論のもとでは、所有権留保のほうが集合動産譲渡担保に優先することが多いことになる。そうすると、動産の売主が先取特権を取得しているにすぎない場合と所有権を留保して動産を売買した場合では、集合動産譲渡担保の対外的効力に極めて大きな違いがあることが判明した。効力について所有権留保>集合動産譲渡担保>動産売買先取特権という結論を肯定するのかどうか、肯定するとしてその実質的根拠をどこに求めるか、なお考察の余地はあり、この点については研究の継続を必要とする。(2)集合動産譲渡担保権の侵害についても、東京池判平成6・3・28の検討により研究成果をあげることができた。(3)設定者破産の場合において集合動産譲渡担保が否認の対象となるかどうかについても整理することができた。 2.特定債権譲渡規制法における特別目的会社-特別目的会社は債権の集合性を人為的に作りだす「箱」-と集合物を対比する中で、集合動産譲渡担保の法的性質を解明するためのキ-概念となる「集合物」については、物概念との連関を考えざるをえないとする研究当初の予想が正しいのではないかという感触を得た。
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