1.平成6年度では、主にアメリカ合衆国の会社役員賠償責任保険について研究した。アメリカ合衆国では、一時期、引受について問題があったものの、近年にはすでにその社会において定着しており、今後は同保険の約款解釈の問題が主たる議論の対象になる。そこで、約款条項に関してとくに重要と思われる免責条項等についての裁判例を検討した。この検討結果は、日本における同保険の約款解釈にも応用できる。 2.平成7年度では、主に英国における1989年会社法改正に至るまでの経緯について、1925年のグリーン委員会の報告書の分析・検討を行い、併せて近時の310条に関する裁判例の詳細な検討を行った。英国においては、取締役の責任免除を制限する1985年会社法との関係おいて、会社役員賠償責任保険の有効性が大きな問題となった。その議論の結果、結局1989年に会社法を改正し、会社が会社役員賠償責任保険を購入しその保険料を支払うことができる旨を明定し、立法的にこの問題を解決した。 3.平成8年度では、日本における会社役員賠償責任保険についての諸問題を検討した。その結果、アメリカ合衆国では各州の会社法が会社による保険契約の締結を認めることを明らかにし、また、英国でも日本と同様の問題があり、会社による保険契約の締結を立法的に解決しているので、日本でも立法的に解決すべきであるという結論となった。 4.以上の比較法的検討から、日本における会社役員賠償責任保険に関して、立法論を含めて改善すべき問題点を再検討した結果、早急に会社が保険契約を締結できる旨を商法等において明記すべであるという結論に到達した。また、現在日本で使用されている約款についても、少なからず改善すべき問題点があるので、アメリカ合衆国における約款の問題点についての検討を参考にしながら、日本の約款を改善すべきである。
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