1 本研究においては、多様な休暇に関する文献及び調査資料を収集し、分析を行った。また、富士ゼロックス他6つの企業及び労働組合の聞き取り調査も実施した。 こうした調査研究で現在までに明らかになったのは次の諸点である。すなわち、(1)普及率は各休暇によって異なるが、比較的多くの企業で導入されているのは、リフレッシュ休暇、介護休暇、育児休暇である。(2)多様なタイプの休暇の導入率は、大企業ほど高い。(3)労働省の、こうした休暇への関心は比較的高いが、実際に取得する労働者は、必ずしも多くない。これには、職場の人員体制のほか、取得要件、取得中の賃金保証の不十分さなどの原因が考えられる。(4)年休の取得率を引き上げるには、病気休暇の制度化が不可欠である。但し、これには年休と同様、賃金が保障され、かつ人事面での不利益取り扱いがないことが前提となる。多様な休暇が最も普及しているのは、富士ゼロックスであった。こうした休暇の制度化にあたって、モデルとなり得ると思われる。 さまざまな休暇制度と年休との関係を明らかにすることも本研究の重要な課題であったが、その視角及び理論上及び実務上の問題点を析出するために、年休に関する最高裁判例の分析も行った。 2 多様なタイプの休暇制度に対する企業及び労働組合・労働者の関心は高く、導入率も徐々に高まっているが、制度上の不備(取得要件の厳しさ、賃金等の保障の不十分さなど)、休暇相互間の関係の不明確さ、特に使用者側における、労働者の権限としての休暇との捉え方の希薄さなど少なからぬ問題点が浮彫りになった。こうした問題の解決方法をさぐるには、さまざまな休暇が普及している外国の研究が不可欠であり、これが今後の課題と考えられる。
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