1 94年度の調査研究によって、わが国の多様なタイプの休暇には多くの問題点・課題のあることが明らかになったが、本年度は、これを踏まえて比較法研究を行った。 2 本年度の研究で得られて主な成果は以下の通りである。 (1)ヨーロッパ諸国では、年休制度が充実しており、かつ完全取得されている。年休制度の発達には労働協約が重要な役割を果しており、また計画的に取得されている。安価なリゾート施設も完備しているなど、さまざまな点で年休を享受できる社会になっている。 (2)年休を取得し得、また文化的社会的生活を享受できる前提として、病気休暇、看護休暇、教育休暇など多様な休暇が完備している点を指摘し得る。特に、何らの不利益を課せられることなく、かつ有給でそれを取得できる点は重要である。 (3)余暇意識の違いも重要と考えられる。これは、ヨーロッパ諸国では、個人主義が確立しており、主体的に余暇設計する点が大きいと思われる。 (4)年休と多様タイプの休暇とが一体となって労働者の生活の充実が図られていると考えられ、両者は統合的に捉えていく必要がある。 3 来年度は、実態調査及び比較法研究を踏まえ、労働者の休暇権及び社会文化的生活の充実との観点から、わが国において「ゆとり社会」を実現する方向を探る。法制論や法理論の提示が中心となるが、「企業社会」といわれるわが国の社会自体のあり方も検討していく予定である。
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