多様なタイプの休暇制度に関して、平成6年度は実態調査、同7年度は比較法研究を行った上で、同8年度は、これれの調査研究を基盤にして、労働者個人の休暇権及び社会的文化的生活の充実、さらに自己実現との視点に立ち、まとめを行った。 1 多様なタイプの休暇を導入目的によって分類すると、(1)年休取得率の向上及び長期化をめざすもの(フレックス休暇等)、(2)年休取得率の向上を側面から促進するもの(病気休暇、積立保存休暇等)、(3)節目毎に心身のリフレッシュを図るもの(リフレッシュ休暇)、(4)自己実現を促進するもの(ボランティア休暇等)がある。これらは、その程度に差はあるが、徐々に普及しており、積極的な役割を果たしている。 2 休暇先進国であるドイツにおいて、年休が100%取得されているのは、(1)年休取得の計画性、(2)十分な要員配置、(3)多様なタイプの休暇の制度化、(4)労働者の余暇感及び勤労感、(5)低廉な施設の存在などの要因による。また、週労働時間が約35時間と時短が進んであり、休暇によらなくても自己実現できる時間が確保されている点も重要である。 3 多様なタイプの休暇は、今後、わが国が真の意味での「ゆとり社会」となるために、普及・定着されねばならない。その際、次の点が課題となる。第一に、休暇が会社中心ではなく、労働者を主体とした制度でなければならない。このためには、休暇を労働協約や就業規則に規定し、かつ制度内容及び付与基準を明確にしなければならない。第二に、年休の取得率を向上させなければならない。この実現と相まって多様なタイプの休暇も普及していくからである。第三に、労働者を個人として尊重し、自己実現を促進する企業風土を構築することである。
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