平成7年度の研究として、次の作業を実施した。(1)福岡県内の業種の異なる相当数の企業を訪問して、各種休暇の実施状況や運用上の困難などについてヒヤリング調査を行った。(2)雇用情勢の変動にともなう労働契約法理の見直しの動向の中で、あらためて「休暇」の労働契約法上の位置づけを再検討した。 右の(1)については、福岡県内における、商業(百貨店、大型スーパー)、製造業(家電、窯業)、接客業(レストランチェーン)、金融・サービス業(銀行、リ-ス業)、大規模病院などの、合計10社について企業を訪問し、人事担当者に対して、年次有給休暇、病気休暇、育児・介護休暇の実施状況や運用上の課題について聞き取り調査を行った。各業種によって休暇の活用状況や運用上の障害は実に多様であり、それらは各休暇の法制度における実務上の問題点を喚起させられるところとなった。 しかし一方で、業種や企業を超えた共通の問題状況も浮かび上がってくる。とくに、昨今の雇用情勢の変化や労働についての意識の変化による、労働者の雇用形態やライフサイクルの選択の多様化が、休暇の運用においても新しい問題を惹起していることが明らかになった。そして、このことの発見は、(2)における労働契約法理の中での休暇論の位置づけにおいて、新しい「休暇」論の視点や課題を浮き彫りにするものといえよう。 平成8年度における本研究の理論化と総括に向けて、「休暇」のもつ労働契約上の多様な側面について有益な示唆を得たところである。
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