A.精神障害犯罪者の再犯に関するデータの収集と分析 1980年1年間に我が国において精神障害の故に検察官による不起訴処分を受け、あるいは裁判官によって心神喪失ないし心神耗弱を認められた、総計946例について再犯に関する11年間の追跡調査を行い、データを収集し、分析を加えた。 11年間に再犯を示した事例は総計204例で、罪種別に見ると、再犯率が最も高いのは、覚醒剤事犯で(60%)、ついで窃盗(32.9%)、さらに詐欺、強盗、暴行、恐喝・傷害、強姦・強制猥褻などがほぼ30%近い比率で続く。最も再犯率の低いのは、殺人(6.8%)および放火(9.4%)である。これら再犯事例について、再犯に関わる要因について検討中である。再犯事例では、職業では無職者が多く、居住については単身居住、住居不定者が多く、治療を中断しやすいケースが多い事などが明らかになってきている。 B.対照群のデータの収集と比較分析 1980年に有罪判決を受けた一般犯罪者より、殺人と放火の事例についてランダムサンプリングを行い(殺人180例、放火185例)、上記した精神障害犯罪者と同様にして再犯調査を行った。その結果、対照群の再犯率は、殺人で28%、放火で35%に及ぶことが明らかになった。この再犯率は、精神障害犯罪者のそれと比べ著しく高い。ただし、一般犯罪者の再犯率は、覚醒剤取締法違反などなどによって大幅に高めらており、凶悪犯罪に限れば精神障害犯罪者と一般犯罪者の再犯率に、それほど大きな差はない。 精神障害犯罪者の再犯要因に関するこれらの資料、分析結果は、我が国の精神障害犯罪者の実態を余すところなく明らかにするものとして貴重であるばかりでなく、我が国における精神障害犯罪者対策を検討する上でも重要な資料となる。
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