研究概要 |
前年の研究結果をもとに,多変量解析をおこない,触法精神障害者の再犯要因を分析すると,再犯者の中にもサブグループによって再犯要因の構成が異なっている可能性があることがわかった.とくに精神分裂病と認定された精神障害者は,他の障害とは異なる動向を示していた.また殺人事件の加害者も他と異なる動向が示された.従来の研究においては再犯の最も重要な要因は前歴であることが例外なく示されており,前年度の結果もそれに沿ったものであった. 前年度収集した対照群(放火と殺人)365人を精神障害の群と比較した.一般犯罪者は刑期が長く,再犯可能期間は触法精神障害者より短いと思われるにも関わらず,再犯率は一般犯罪者のほうがかなり高くなる. また,サブグループの特徴を分析していくために,殺人,精神分裂病に対象を限って、精神障害が再犯にどのように影響を及ぼしているかについて知るために,犯行時の精神障害の状況についてさらに詳しく検討を行った.新たに調書の内容から精神障害の内容を調査し,精神分裂病と認定された者の殺人について分析した.また再犯207例の内累犯の最も多かった2例について事例検討を行った. 一連の研究により,触法精神障害者の特性がある程度明らかになったと思われるが,対照群との比較については更に統計的解析を行う必要がある.また1994年の新たなデータに基づき触法精神障害者群の変化について分析を進めている.
|