本研究の目的は、比較可能な統計的データを体系的に収集し、利益集団データを作成すること、さらにそれに基づき基に先進国の利益集団の形成・変容をできるだけ客観的位置づけることであった。またそれにより先進国政治体制論争に理論的寄与をする素材を提供することであった。 筆者は、二年度の研究によって日本、韓国、アメリカに加えて、イギリス、ニュージーランド、カナダ、オーストラリアの団体に関する国勢調査データ(団体従事者、非営利団体従事者)、ほぼすべて国家のINGO数量データ(INGO本拠数、INGO参加数)、NP(非営利)セクターに関する統計等を共同研究者とのデータ交換や海外調査による作業などによって収集しえた。二年度目にははある程度完成したこの利益集団データベースに依りつつ、日本、韓国、APEC構成国、日韓比較、日米比較などの歴史分析および比較分析を遂行した。 結果として、日本の位置に関して、発展の時系列的特性(4つの波)、総体としての発展度(先進国中、中位以上)、産業系団体への片寄り(特にビジネス)、市民系の把握困難さと推定される未発達、1980年代以降の新しい動向(その他団体の急増)、国際NGOの国内未発達(欧州の優位)と国際参加の急増、NPO(非営利)セクターの特性などの点で、新しい発見が析出しえた(別記の諸論文参照)。 こうした発見は世界的にも初めて確証され分析されたものもあり、政治体制論に新しい視角を提供するものである。また、1990年代中葉の政治変動理解への構造的視角、日本の世界戦略への示唆、韓国などアジア諸国の位置づけなどに関しても新しい光を投じるものである。筆者は現在、この研究に基づき現代政治体制論および比較利益集団論を書物の形で執筆中である(1996年度内に刊行予定)。
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