本研究は、1993年の総選挙で選出された衆議院の一年生議員に対して行ったものである。国会議員の政治行動におけるパーソナリティの役割を検証するため、アンケートやインタビューを通じて多くの議員からデータを集め、また彼らの著書や雑誌や新聞におけるインタビューの内容分析を行った。まず最初に、1993年から1994年にかけては、110名の国会議員から、様々な心理テストやデモグラフィック特性を含んだ質問票を用いてデータを収集した。さらにその内90人の議員に対しインタビューを行い、政治的信念、態度、政治家を目指した動機、青少年時代の経歴などを質問した。さらに政治的信念、社会的方向性などをより深く理解するため、著書やインタビューを分析した。 これらの分析の結果、日本の国会議員に関していくつかの重要な側面がうかびあがってきた。まず第一に、比較文化的な視点からは、日本の国会議員はアメリカの政治家よりも教条主義的だが、イタリアの政治家に比べると、さほどでもないという点である。第二に、ほとんどの国会議員は社会や政治に関連した活動に子供時代から参加しようとする意向があったという点である。国会議員に当選したとき、彼らは少年時代の夢を実現させたわけだ。幼い頃彼らの態度に最も影響を与えたのは母親であった。そして、ほぼ全ての議員が、少年時代からすでに様々の政治的活動に関わりを持っている(生徒会長など)。第三は自尊心に関連するもので、この点について国会議員は自尊心の高いグループと低いグループとの二つに分けられる。国会議員に対して行ったインタビューによると、自尊心の低い国会議員は、自己宣伝の表現とか、政治における役割、政治的信念、政治的ビジョンの表明などの点で自尊心の高い議員とは明らかに異なる。最後に、自己複雑性(Self-Complexity)を持つ国会議員はより社交的で、大衆の要望に敏感に反応し、有権者の関心に対して献身的といえる。 上述した結果は、本研究の分析においてはごく基本的なものといえよう。より高度な分析として、現在は日本の国会議員における政治的態度と行為を欧米社会におけるそれと比較分析しているところである。
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