当初の計画では、政策事例を扱った事例集の作成と、事例を実践的に活用するための方法論的探求を同時に進めることとなっていたが、事例集の作成に関しては、そのためのインフラ整備と役割分担などに手間取り、具体的な成果を出すに至ってはいない。 逆に方法論に関しては、議論が進んでいるが、調査が進展すると同時に、かえって事例活用に関する障害が発見され、全体として研究の進め方を見直すことが必要であるということになった。これは研究参加者の中で、政策事例に関するイメージが異なっていることが、議論の過程で明らかになったことが最大の原因であり、また埼玉大学政策科学研究科で現在行われている教育の経験をどう評価するかという問題とも関係している。要するに、政策形成・実施過程を追体験するのに政策事例が有効だという場合、文字どおりシナリオ的に追体験するのか、ポイントだけを知的に認識するのかという立場の違いである。このとき、準拠例として想定したアメリカの経験を評価するときに、日米の文化の違いが問題になるのは当然である。 そこで、事例集の作成の仕方についても意見が一致していないが、参加者が事例を準備して実験的に使ってみる過程で、こうした議論に一定の結論が得られるはずであると考え、それぞれのアプローチで研究を進めることとし、具体的な成果は2年目に作成することにした。 ただ、こうした活動が紹介されたこともあり、外部の研究者との交流も出てきているので、これを契機により幅広い観点から研究を進めることを確認している。
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