研究課題/領域番号 |
06620050
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
馬場 康雄 東京大学, 法学部, 教授 (40013031)
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研究分担者 |
網谷 龍介 東京大学, 法学部, 助手 (40251433)
平島 健司 東京大学, 社会科学研究所, 助教授 (40156659)
高橋 進 東京大学, 法学部, 教授 (40009840)
塩川 伸明 東京大学, 法学部, 教授 (70126077)
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キーワード | 民族紛争 / ナショナリズム / エスニシティ / 国民国家 / 脱社会主義化 / ヨーロッパ統合 |
研究概要 |
ヨーロッパ統合や経済のボーダーレス化等にみられるように、いわゆる「国民国家」はイデオロギーのレヴェルでも現実の機能においても、その基盤を彫り崩され自明性を喪失している。民族問題の多様化という表面的事実を後追いすることよりも、民族問題の発生をこうした構造的変動の文脈のなかに位置づけて把握することが本研究の基本的立場であった。そしてこの立場を前提として、旧ソ連・東欧の民族紛争と西欧諸国の民族問題に対して事例の分析を行い、それと並行し個別事例の統一的理解に資する理論的枠組みを構築することが本研究の目的であった。旧ソ連・東欧に関しては、旧社会主義体制を「文化としての社会主義」という人間の行動様式の型として理解するという視点が打ち出された。脱社会主義化過程において民族紛争が噴出している事態は、社会主義以前の文化が現在思い起こされているという事実、社会主義体制下でも伝統が根絶されたわけではない事実を示すものであったが、この伝統的文化としてのナショナリズムと「文化としての社会主義」の融合の様態こそが各国独自の民族紛争の構造的条件になっていたのである。西欧諸国に関しては、イタリアとドイツという19世紀後半のナショナリズム運動の結果成立した「国民国家」の現時点での、特に第二次世界大戦後の体制の構造変容の多角的な歴史的位置づけの作業を行うことができたが、この作業は19世紀後半の各国ごとの「国民国家」のあり方(「国家」と「国民」ないし社会の関係の様態)を比較分析する課題を与えるものでもあった。こうした一連の研究作業を通じて、現在はある大きなシステムの変動期(「国民国家」の構造変容はその構成要素の一つである)ではないかという仮説が提示された。このシステムの変動を総体的にとらえるより具体的な必要性を、本研究は民族問題の分析を通して認識させるものであった。
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