本研究では、この国際秩序の変容に伴って急浮上している南北問題にたいしての戦後国際政治学理論の展開過程を分析し、南北問題へのアプローチの有効性とその限界、さらには問題点をみようとするものである。そして、南北問題解決の一手段としての「国際協力」の理念やその理論的粋組みの構築をめざす。とりわけ、国際政治学が前提とする「発展」認識とはいかなるものであり、開発の理念形はどのようなものであるかが解明されない限り、国際機関や先進諸国が採用している開発政策の内実を問うことはできないだろう。したがって、本研究では、国際政治学が前提とする発展認識や開発理念を解明し、その理論的な展開過程に焦点をあてながら、国際政治場裡に登場している「開発援助」「国際協力」の源泉を探る。さらにくわえて、国際社会の変容と連動して、今後のありうべき「国際協力」とはなにか、さらにはその理念および理論的粋組みを政治経済学的に接近してみる。 研究計画初年度では、研究経費の関係で主要文献の収集にあて、かつ歴史的な分析よりもむしろ「国際協力」の理論化に力を注いだ。その成果は、「地球的共(協)生学としての「国際協力」」(鴨武彦編『講座:世紀間の世界政治 第6巻 日本の国際化』(日本評論社刊)として公表した。
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