第2次世界大戦後の国際政治は冷戦によって彩られたが、第三世界諸国の独立問題も、また独立後の国家建設や国民国家創出の試みもまた冷戦によって支配された。第三世界諸国の独立問題は、植民地と民族解放による国家建設にとって代わられ、国際政治からさまざまな制約をうけるなかで展開をみたのは周知のとおりである。しかし、この歴史的な展開過程で、第三世界の独立と開発問題とが相互に連関し、かつ冷戦の論理に巻き込まれていたことはあまり知られていない。本研究では戦後の国際開発政策の推移をみながら、国際政治に大きく影響された「貧困」概念がその後の南北問題を規定し、国際援助機関によって支えられた近代化、工業化政策重視による経済成長路線を歩むことで第三世界の貧困化が深化し、さらには新自由主義の台頭によって「貧困」化が世界大に波及する経緯を迫った。その帰結がこんにちのグローバル化過程である。本研究からは、第1に、戦後世界を支配した冷戦と「貧困」を経済成長によって解消しようとする開発政策との連動性を明らかにした。第2に、国際政治学理論もまた同様な問題認識をしめしてきたといえるが、「貧困」をめぐる認識の差異からうまれた諸学派のパラダイム、とりわけ「貧困」解消策と南北問題の把握手法の特徴やその差異を抽出した。第3に、国際協力理論の研究動向とあわせて、南北問題が冷戦終結後の世界における現実政治から後衛に退く新たな局面で登場してきたグローバル化過程理論のさらなる精綴化を課題とした。
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