本研究は、主としてベトナム介入以降の米国の対外介入を分析することで、介入の決定の背景にある原則を見出し、冷戦後にも共通する米国の対外の特徴を考察することを目的とした。 対象とした介入政策は、軍事介入、秘密工作および対外援助で、介入を要する状況(必要条件)と、介入の手段(十分条件)の双方に関して分析を行った。また、外交としての介入政策の意味だけでなく、米国の国内政治道程において介入政策の決定がもたらす影響も考慮した。 冷戦期の対外介入の特徴は、どの政策分野においても圧倒的に反共産主義に影響を受けているという点である。共産主義の脅威が示せれば、必要条件としては十分で、また国内政治的にも十分条件としてほとんどの手段に対する支持があった。戦略的目的が並存する他の目的に優先して考えられたため、長期的には米国にとって不利となる政策から、軌道修正を行うことすらできない場合もあった。自国の価値観を相手国に投影し、ミラーイメージとして行動する裏には、米国は「特別な国である」という自負がうかがえた。 冷戦後は、圧倒的な脅威としてのソ連が消滅したため、介入原則が相対化されると思われていた。しかし、唯一の超大国として残った米国は反共と同義的に用いられていた民主主義に、道義的な価値を持たせ、介入の原則として前面に押し出した。そこには、冷戦期に見られた価値の絶対化に共通する側面がある。この特徴は、米国の力が相対的に低下して、国際機関や他国との協調主義が協調される中で、より大きな摩擦を生じさせている。 こうした価値の相対化の欠如には、米国国内の多元的民主主義が外交政策決定において十分機能していないという問題が関係している。対外介入の原則は究極的には国内政治の原則であるといえる。
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