1.初年度である本年は、1989年から1995年までの間の欧州の変動による冷戦対応型組織(北大西洋条約機構、欧州連合、西欧同盟など)の変容を、旧東欧の西欧への統合という観点から、それぞれの冷戦期の役割を明確にした上でまとめた。 2.1994年-95年の間の動きとして、とくに重要であったのは、NATOの東への拡大問題であった。拡大を希望する国の要求と、これを牽制するロシアの双方の利害を勘案した妥協案である「平和のためのパートナーシップ(PFP)」が実施過程段階に入ったが、これを整理することは、NATO拡大を検討する上で極めて重要であることが明らかになった。 3.検討の結果、欧州連合については、フィンランド、オーストリア、スウエーデンが1995年1月に加盟したことにより、安全保障インプリケーションが増したことを指摘できる。これらの国々は、当面、軍事的非同盟を続けるとみられるので、安全保障を欧州連合の枠である程度、実現せざるをえないからである。 4.「欧州協定」による欧州連合と中・東欧諸国の対話強力枠組みは、94年-95年を通じて、共通外交安全保障政策への参加形態が設定されるなどの進展があった。 5.西欧同盟の連合パートナー制度も、協議を中・東欧に開くなどのめざましい動きがあった。 6.94年12月のCSCEブダペスト再検討会議では、NATOや欧州連合の拡大という長期的な目標との関係で、ロシアを欧州から孤立させないために、CSCEを活用するという欧米の対応が益々顕著になった。
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