1。本年度については、欧州再編の礎石となる地域国際組織の中で、とくに北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大問題が再編過程に大きな影響力を持つことが明らかになったため、この問題を重点的に扱った。東方拡大にロシアが強く反対しているため、北大西洋条約機構諸国は、拡大準備とロシアとの協議・協力関係の増進を並行して進める政策をとっている。かかる政策の成否は、ロシアの内政状況に大きく左右される。 2。北大西洋条約機構のなかの欧州連合(EU)加盟国は、欧州連合の東方拡大と北大西洋条約機構の東方拡大をほぼ、同時期に実施する政策を有しており、北大西洋条約機構の拡大と連動する問題となっている。 3。欧州連合自体は、東方拡大の前に、組織の政策決定などの整備、欧州連合条約の共通外交・安全保証政策に関する条項の見直しなどを1996年3月に開始される政府間会議で交渉する。ここで、軍事同盟である西欧同盟(WEU)と欧州連合との関係-WEUをEUに取り込んで合体させるか、当面、政府間組織として別個に維持するか-についても検討される。この検討は、米欧関係すなわち、北大西洋条約機構の変容を東方拡大問題とともに、促進する可能性がある。ロシアの国内情勢は、そのすべてに影響を与える要素である。 4。別途の研究費による現地調査と総合し、上記1-3が研究の結果、明らかになった。この成果は、裏面に記載された論文もしくは共同執筆者として発表されたほか、スエ-デン国際問題研究所(ストックホルム、95年6月)で開催された「日欧ワークショップ」、欧州政治関係学会共同体が組織した国際関係学会(パリ、同年9月)などの口頭報告を行った。後者については96年半ばにイギリスで出版される共同執筆書に論文が収録されることになっている。
|