研究概要 |
(1)本研究は、東西軍事対立終結後の欧州における国際秩序再編問題を、その礎石である欧州の組織の変容を通じて明らかにし、次代の欧州秩序を展望するものである。欧州関連組織としては、北大西洋条約機構(NATO)欧州連合(EU)、西欧同盟(WEU)、欧州安全保障協力機構(OSCE)、欧州審議会(CE)に焦点をあて、その加盟国および役割の変容過程を跡付けた。(2)CEは、ロシアを含む旧東側諸国への拡大をほぼ、実現し、これらの国々の民主主義の定着を促進している。NATO,EUは、旧東欧への拡大の具体的なタイムテーブルを明らかにし、拡大の準備に入っている。NATO、EU、WEUともに、それぞれ、方法は異なるが、旧東欧諸国との協力を制度化し、ロシア、ウクライナとも加盟を前提としない、協力関係を強化しようとしている(3)OSCEは、活動の中心を紛争の未然防止に移した。NATOの東方拡大によるロシアとの緊張を緩和する役割が期待されたが、安定化措置は、OSCEの場ではなく、ロシア=NATO間ではかられている。(4)WEUはEUの政府間会議(IGC)によって、その位置づけが見直されているが、政府間組織として当面、存続するものとみられる。NATOの東方拡大はWEUの東方拡大に先行する。(5)欧州秩序の再編は、旧東欧への欧州組織の拡大を伴う。NATOの拡大過程で短期的には、不安定な状態が生じる可能性があるが、第一次拡大の非対象国およびロシア、ウクライナなどに対し、NATOの外延の協力枠組みや、そのほかの欧州組織、下位地域協力体がその機能が十分に発揮すれば安定化がはかられ、中・長期的には欧州の国際場裏における影響力は増大することになろう。(6)本研究の遂行過程において、欧州の変動自体が日本およびアジア・太平洋に与える影響および両者の安全保障制度の比較についても研究が発展し、これに検討を加えた。
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