今日では、諸国家とその経済の関係を包括的に理解するには、拡がりつつある市民社会の交わりを中心に考えなければならない。そして、これらの市民社会を代表する最も活発な要素としては、やはりNGOの存在が挙げられよう。 ここ二十年間、日本でもNGOが急速に伸びた。しかし、欧米に比べれば、その規模もそれがもつ影響力もまだ小さく、そこに日本の中央集権的な伝統が反映されている。政府からの支援がようやく増加しはじめたものの、他の先進工業国に比して、政府-NGOの関係は未だにやや疎遠なものであることを認めざるを得ない。しかし、NGOに対する一般的な支持が広がる現在、国もいっそう積極的にこれを援助し、公認することが期待されている。 小規模のNGOは、公的機関の干渉からは高度の独立性を維持し、より大きなNGOの嫉みをかう傾向がある。中でも、実践的かつ進歩的な類は、最も望ましい意味で国際的であるとも言えよう。しかし、全てがこうであるのではなく、保守的かつ愛国心の強い団体も存在する。 大半のNGOは、資金を賄うのに大きな困難を抱えており、それを解消するに当たって大きなジレンマに直面している。つまり、国や企業からの支援は増えるが、それを受けることによってその活動における主体性を失う恐れがあるのではないか。要するに、NGOはどこまで外部からの干渉を強いられずに自主的な活動をし続けることができるのか。一例としては、企業の側から「日本人論」や「日本中心のアジア」と言った考え方が、NGO界に感染することが懸念されているのである。現に、NGOなどの団体の活動を促進するための「NPO法案」が国会で審議されているが、これもまた政府や行政の干渉を招く危険があり、NGO関係者の間で激しく論争されている。
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