研究概要 |
本課題研究では、ヴィンテージの異なる資本財を含む世代重層モデル(overlapping-generations model,以下OLGモデルと呼ぶ)の分析を目的とした。このモデルは、資本財に100%の減耗率を仮定しないという意味で、標準的なOLGモデルと異なる。耐久資本財の存在から、資本財価格と消費財価格との関係を考慮しなければならなかった。具体的には、以下の問題を考察した。 (1)ヴィンテージの異なる資本財を含むOLGモデルの設定と競争均衡の定義。 (2)均衡での資本財に関するヴィンテージ構成の決定。 (3)生産効率性のための必要十分条件の導出(Cass(1972)の定理の拡張)。 (1)では、標準的なOLGモデルでの資本財の取り扱いを変更し、t期での資本財ストックK_tを K_t=a_0K_t+a_1K_<t-1>+a_2K_<t-2>+…;a_t>0(t=0,1,2…) と定式化した。この結果、feasibility条件はc_t=f(K_t)・k_t>0,(t=0,1,2,…),(但し、c_tは消費量、k_tは投資量、f(.)は生産関数)となる。 (2)では、競争均衡での資本財構成を知るために、まず定常状態を想定した。その結果、減耗率を示す係数a_tに依存して、ヴィンテージ構成が決まることがわかった。a_tがtの増加とともに単調に減少するのであれば、ヴィンテージの古い資本財のウェイトも減少することとなる。 (3)では、資本財の耐久性を捨象したCass(1972)以降の結果を更に進め、資本財ストックK_tの価値p_tK_tの有界性がTransversality条件となることを示した。
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