本研究では、さまざまな種類の情報不足から生ずる市場メカニズムの問題を、最近において急速に発達した情報技術の成果、すなわち企業間取引情報の電子化(EDI: Electronic Data Interchange)を利用して緩和するための方策を考察した。 本研究は、経済情報の疎通によって個別経済主体の情報不足を改善し、それによって市場メカニズムの欠点を緩和するため、EDIから電子的にサンプリングされた企業間取引情報に基づいて構築される「経済情報供給システム(仮称)」を検討した。また、この種のシステムのサービスは公共財的要因を含むので、同サービスを供給する「経済情報産業(仮称)」における競争・独占・規制などの制度・政策面の問題をも考察した。 (1)「経済情報システム」の予備的な設計- (a)同システムにおける情報の流れ、すなわち標本採取、情報の加工・組織化、およびその利用・供与方式の指定、サービス価格の決定方式、(b)同システムの実現に必要なハードウェアおよびソフトウェアの機能の概略の指定、(c)同システムの建設および運用費用の概略の試算をおこなった。 (2)「経済情報システム」の建設にともなう問題点および近い将来において実行必要と考えられる政策課題の特定-産業投資における失敗(過剰投資、投資遅延)の緩和・防止に有用なシステムに重点をおき、(a)この種のシステムを不用意に導入した場合に生ずる不安定性の可能性やそれが起きる条件、(b)同システムによって採取・作成される情報と企業秘密、同プライバシーの関係、(c)同情報の所有・使用・加工等に関する権利面の問題、(d)バイアスの小さい標本採取をおこなうための条件、(e)同システムの独占と規制に関する問題などを考察した。
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