本年度に実施したことは、ほぼ次のとおりである。 (1) Rymes の編纂になるケインズの講義(1932-35年)に関する資料に検討を加え、その成果を論稿「ケインズ講義録(1932-35年)の検討」として発表した。 (2) A Study of Keynes's Economics(執筆中)のなかに、(1)の成果、ならびに以前に検討を加えたWicksell Connectionの成果を、大幅に取り入れた。 (3) また(1)の成果については、経済学史学会第58回大会において、「「ケインズ革命」考-「ケインズ講義録」(1932-35年)からの検証」と題して発表を行った。 (4) 上智大学図書館に所蔵の「ケインズ文書集」(マイクロフィルム)の関連リ-ル(とくにReels 27-29、33-35)をコピーするとともに、それらに検討を加えた。 (5) 「ケインズの市場社会観-似而非道徳律と経済的効率性のジレンマ」と題する論稿を執筆した。これはケインズの同時代人の市場社会観を比較・検討していくための第一歩として位置づけている。 (6) 「戦後世界の形成-雇用と商品」(『ケインズ全集』第27巻)の翻訳の最終校正を実施した。そしてそれに合わせて「戦後世界体制の構築をめぐるケインズの活動」と題する、「救済問題」と「一次産品の国際的規制策」をめぐるケインズの活動を検討対象とした論稿を発表した。これは「ケインズ革命」の政策的側面からの研究である。 (7) 『経済学における正統と異端』(昭和堂)の編著者として、「貨幣的経済学の興隆起-「ヴィクセル・コネクション」と「ケインズ革命」」を執筆した。 (8) この数年の研究成果を踏まえて、かねてから企画中の三冊の著作の執筆(A Study of Keynes's Economics、『ケインズとブルームズベリ-』、『貨幣的経済学の系譜』。いずれも仮題)を同時に進めてきている。いずれもあと一年内に完成の予定である。
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