本年度は本研究の最終年度である。本研究課題の理論的側面については本年度は離散的構造を持った経済モデルの性質をさらに深く究明するための研究を行った。まず、single-peaked preferenceと財の分割不可能性を持った経済の族において、ランダム化された資源配分が可能な場合に、戦略的操作不可能性、パレート最適性および匿名性を満たす資源配分メカニズムがただ一つだけ存在することを明らかにした。この証明は財の分割不可能性という問題の離散的構造に強く依存した構成的なものである。またここで得られた定理は、硬直価格制下の資源配分問題などに直ちに応用できる。この他の理論的成果としては前年度得られた外部性を伴ったマッチング問題の研究をさらに発展させ、片側だけに外部性がある場合のマッチング問題について安定的な配分の諸性質などを明らかにした。とりわけ、外部性を伴ったマッチング問題で安定な配分の存在を証明するために用いられる修正ゲ-ル=シャプレイ・アルゴリズムが片側外部性の場合には単に存在証明のための道具としてだけでなく、パレート最適な配分の存在を示すためにも有効であること、さらに両側外部性の場合と異なり片側外部性の場合には戦略的操作不可能性の成立可能性についてはむしろ外部性がない場合と親近感のある結論が得られることなどが示された。次に実証的研究については、マッチング問題のケーススタディの一環として大学の付属高校から大学への進学者を配分・決定するメカニズムについて実際のケースに基づく研究を行っている。
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