7年度は、これまでの神学的背景の研究をふまえて、主としてアダム・スミスに至る経済学形成への系譜的検討とそれに伴ういわゆる「シヴィック・ヒューマニスト・パラダイム」批判を行った。また、夏期休暇中は英国・スコットランドのエディンバラ大学で、昨年に引き続く1750年代のケイムズをめぐる異端論争関係の文献調査を行うと同時に、アバディーン大学での18世紀スコットランド学会1995年度年次大会に参加し、更にユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンのベンサム・プロジェクトにてベンサムとスミスの影響関係について文献調査を行った。 国内では、社会思想史学会(10月:長崎総合科学大学)経済学史学会(10月:西南大学)に参加。特に後者では、個人自由論題報告「シヴィック・ヒューマニスト・パラダイムによるアダム・スミス像批判」およびシンポジムウ「文明社会の光と影:スコットランド啓蒙の思想課題」の組織と司会を行うなど、当該分野の研究の進展に尽力した。 新たに得られた知見は、主にスコットランド啓蒙にかかわる3本の雑誌論文に結実(裏面参照)したが、これらはわが国のスコットランド啓蒙研究に明確なシヴィック批判の立場から一石を投ずるものになったと自負している。 また、副産物として、日本の経済思想を中心とした研究の歴史的特質についての2本の雑誌論文(裏面参照)、韓国・建国大学(ソウル)での「東アジアの経済発展と経済思想の役割」と題するセミナーでの英文報告「The Rise and Decline of the Confucian Capitalist Theses」がある。 最終年度にあたる次年度は、成果を発表しつつまとめる所存であり、まずは、18世紀スコットランド学会グルノ-ブル大会にて「ケノムズの自然神学と社会科学」(仮題)と題する報告を予定している。
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