本研究では経済変動の中でも時間とともに変化している動的変動を分析する手段として統計的時系列分析の中でも非正則時系列理論及びマクロ経済データや金融データを計量的に分析する計量経済分析への応用可能性を検討した。 1.経済時系列.特に景気分析においては古くから(例えばケインズの一般理論の中の一節)時系列の非対称性が観察されている。しかしながら簡単な議論から線形時系列モデルによってこうした現象を表現することは不可能であることを示すことができる。そこで.この研究では新しい非線時系列モデルとして同時転換(Simultaneous Switching)時系列モデルを提案し.その応用可能性を検討した。 2.最近の計量経済分析では単位根と呼ばれている非定常時系列をしばしば用いるようになっているので.その分析方法を批判的に検討した。特に多次元時系列において共和分と単位との関係を検討し.構造変化がある場合には従来の方法は極めてバイアスの持つ結果をもたらすことがわかった。そこで新しい検定方法を提案するとともに所得.消費及び為替レートの実証分析を行った。 3.経済時系列理論では通常スペクトル密度関数についての滑らかさを仮定して様々な議論が組み立てられることが多い。スペクトル密度関数がある周波数で発散する場合.その推定法について考察した。また強い周期性を示す時系列データに対して.従来の決定論的な三角関数をもつ回帰モデルの代替モデルとしての応用可能性を検討した。
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