この研究では経済変動の中でも時間とともに変化している動的変動を分析する手段として統計的時系列分析の中でも非正則時系列理論及びマクロ経済データや金融データを計量的に分析する計量経済分析への応用可能性を検討した。非正則時系列理論としては特にエルゴード性を持たない非定常時系列理論及び非線形時系列理論を検討し、計量経済分析との関連を特に以下の問題を中心に検討した。 (i)新しい非線形時系列モデルとして定常同時転換(simultaneous switching)時系列モデルを開発し、さらに非定常時系列へと拡張した。経済時系列の変動における非対称性の例として市場データと金融資産価格の変動を分析を計画し、農産物市場データ及び日経インデックスのスポット・レート及びフューチャー・レートを使って比較分析を行い興味ある結果を得た。 (ii)最近の計量経済分析では単位根と呼ばれている非定常時系列をしばしば用いるようになっているので、その分析方法を検討した。特に多次元時系列において構造変化が存在するときの非定常性の検出方法を提案した。新しい点は構造変化点が複数ある場合及び変化点がある個数以下であるがその個数は事前にはわからない場合も考察した。 (iii)経済時系列理論における弱従属の場合ではスペクトル密度関数の連続性を仮定して様々な議論が組み立てられている。時系列が強従属である場合にはスペクトル密度関数が発散するのでその場合の理論を考察し、経済分析への応用可能性を検討した。 (iv)経済時系列では観察値が欠落している場合があるが、最近しばしば実証分析で利用されている非定常性の検出方法についての結果を得た。
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