研究概要 |
平成6年度は、国連の総合開発計画の作成の手引書(United Nations,Projection Methods for Integrating Population Variables into Development Planning Volume I:Methods for Comprehensive Planning,Module 1(1989),Module 2(1990),Module 3(1993)、以下、『推計方法』と略称)の訳出を行った。7年度は、訳稿の再検討を行った結果、次のことが明らかになった。 国連の『推計方法』は、主として発展途上国の現状をもとに、方法論の一般化が指向される。内容からみると2つに分けられる。すなわち、総合開発計画への人口変数統合化の理論的基礎を与える章と個々の変数の推計方法は提示される方法論的諸章から構成される。前者は、経済成長偏重型計画の批判的検討から着想されたもので総合開発計画作成のための理論的フレームワークとして展開される。後者に関しては、いわゆる総合計画モデルではなくて、個別的な手法が提示される。 前者に関しては、総合開発計画の一般モデルに対応するような計画のフレームワーク論が存在しないので、議論の展開が抽象的なレベルにとどまっていることが分かった。もしそれがあれば、国連の主張-社会・経済開発の目標をより高い生活水準の達成とする計画の作成-がより明確になったと考えられる。後者に関しては、現在、人口についてのみ検討を終えている。その結果、推計手法の一般化が完成の域に近いが、それは必ずしも実際の推計可能性とは一致しないことが分かった。また、人口要因の実績値の遡及推定から、その将来仮定の設定に至るまでが、予備的推計と計画推計の観点から例示されていたならば、『推計方法』の利用価値は高くなっていたと指摘できる。さらに国連の論議を基に、わが国の社会経済計画の作成において考慮すべき点を検討した。
|