研究概要 |
1、ドイツでのグループ労働導入の実態。(1)企業、立地により異なるが、新工場では例外なくグループ労働が導入されている。93年時点でドイツ自動車産業界全体でグループ労働の導入は平均で6,6%であるが、これは、89年段階のMIT研究で0.6%であったことと比較すれば質的な転換が進んでいると言える。(2)とりわけ、メルセデス・ベンツ社のラ-シュタット工場ではグループ作業の割合は全作業の内76%、またグループ作業に参加する労働者の割合は100%であること。またオペルのアイゼナッハ工場では、全作業のうち85%、全労働者の100%がグループ労働に参加していることなど、予想通りであったが典型的な諸例が見出された。(3)ドイツ的な特徴として、a)現状は過渡期にあること。たとえばマイスターが消失したり、機能変化が報告されている。グループは、規模6〜15名であり、チーム代表は選挙または指名。また間接作業の統合が進んでおり、1〜2分の短い作業タクトで作業は遂行されている。b)アイゼナッハ工場は、日本モデルに近く、ゼロバッファー原理が導入されるなど、改善提案一人当たり9,6件でドイツ最高を記録している。c)労組や企業は、弱者の統合、グループ労働参加への個人の意思尊重などを掲げている。当初日本モデルとの距離が強調されていたが、タクトがない組み立てボックスにおける包括的な完全組み立てで知られるスゥエ-デンのヴデバラモデルとの距離が強調されてきている。これについてはさらに子細な調査が必要である。 2、グループ労働の導入は、職務分析にもとづく従来の賃金システムの見直しを加速させている。 3、グループ労働の特徴を規定する諸要素を仮説的に整理した。(1)生産工程の設計のあり方(2)人員配置や生産ノルマの限度とその決定のあり方、(3)労働市場への社会的規制のあり方、(4)労働市場に存在する労働者の意識、価値観、(5)グループ労働構成員内部のあり方、(6)賃金システム (7)経営側のグループ労働の位置づけなど。これらによって各国でのグループ労働のあり方に差が生まれているといえる。
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