ドイツでの特徴は次の点にある。第一に、正規被雇用者のグループ(チーム)方式による労働編成は、日本モデル準拠型とドイツモデル創出実験型とに大別され、後者は日本とスウェーデンのウデバラ工場からの学習成果による。第二に、この独自モデル創出には産業別労働組合が強く関与しており、日本モデルよりも労働条件の改善された形態を探究している。第三に、この労働形態の探究は従来の賃金システムの修正を伴いつつ進行しているが、大半は伝統的な職務記述に対応した賃金モデルの部分修正に留まっている。この実態調査から、日本モデルの特殊性と普遍性も明瞭となってきた。集団的作業自体は生産上昇にとって利点を持っておりこれは普遍的な側面である。しかし、この集団的作業をどのような条件で行うかということによって様々な形態をとりうる。たとえば生産工程の設計、ノルマの設定、人員配置、賃金システム、さらには労働市場全体の特質などによって規定される。日本固有の属人的な賃金体系や企業別組合制度などは日本特殊な側面ということができる。 非正規被雇用者は80年代に拡大したものの90年代に入り鈍化しており、ドイツでの労働者全体における割合はわずかである。派遣労働について欧州全体では(1)禁止・厳格な規制(2)規制なき自由化(3)規制を伴う自由化の3タイプに分かれ、ドイツは(3)に属する。ドイツでは派遣労働者は常用の被雇用者であり、建設業での労働者派遣の禁止規定があり、また有料職業紹介事業と労働者派遣事業とを、明確に区分したものとなっている。日本は派遣労働は厳格に規制されているが、有期雇用は無規制になっており、利用事由や期間の上限の制限がない。しかし、この非正規被雇用者と正規被雇用者との経済的・機能的な関連についてはアトキンソン等の研究を越えるデータや資料を把握できていず、理論的研究としても進展できなかった。特にドイツでも正規被雇用者での労働編成の変化と非正規被雇用者の増大との相互関連はなお不明であり、この点での日本との比較も残された課題となっている。
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