本研究は、環日本海地域を構成する諸国の最近の経済発展の状況を捉え、それがこの地域の環境要素に与える影響を、特に水質問題に焦点を当てて分析するとともに、主に地方政府の手による国際経済交流・協力関係の促進と国際環境問題発生回避の努力の現状を、国際経済・環境協力先進地域であるバルト海海域との比較を通じて評価し、今後のあり方を模索することを目的として行われた。 第一に、作業にあたって、同地域の経済・環境条件を把握するため、北畠(1990)が提唱する経済=環境勘定体系の枠組みにしたがって、環日本海地域を構成する各国の経済=環境勘定表を1990年度のデータにより作成した。第二に、日本海海域における水質汚濁物質の年間流入総量を推計し、それを黄海・渤海などの周辺海域の推計と比較して総体的な水質汚染の深刻度を定量評価した。第三に、同海域の将来の水質汚染シミュレーションのために、金(1996)らが開発した日本海海洋モデルを改良して、地域経済開発事業の進展によるBOD・CODの変動を予測するためのモデルを作成する作業に着手した。第四に、環日本海交流をめぐって活躍する各主体の活動について、とくに新潟県の動きに焦点を当て、その事業推進のダイナミックスおよびそこで活動する国内・国外の各主体間の関係を分析した。第五に、環日本海環境協力の現状を調査し、バルト海や地中海の環境協力事業例との比較を通じて、今後の同地域における経済・環境協力のあり方について考察した。
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