○日本では規制緩和推進政策の一貫として労働者派遣事業の対象業務および有料職業紹介事業の対象職業の拡大が日程に上っている。これらによって、1980年代から進められてきた雇用の弾力化(正規雇用の削減、パートタイマーや派遣労働者などの非正規雇用による代替)が一層促進すると見込まれる。90年代以降、全労働者に占める非正規雇用の比率は約2割のまま停滞気味であるが、労働市場の規制緩和政策はこの2割の壁を打破するものと予測される。 ○イギリスでは先進国の中で最も職業紹介事業の民営化が進んでいるが、1991年から93年の不況期に民間業者は1万7000件から1万4000件に減少した。失業者の就職が困難で職業紹介サービスを充実させなければならない不況期に職業紹介業者が減少すること、及び失業多発地域に初めから民間業者が立地しないこと等は市場原理にもとずく民営職業紹介サービスの限界を示している。イギリスでは1994年4月より公共職業紹介機関と民営職業紹介業者との間で求人・求職情報の相互交換をはじめ、双方の協力が開始された。 ○スウェーデンでは1992年1月に労働者派遣事業が、1993年7月から民営職業紹介事業が全面的に合法化されたが、まだ日が浅いため民間業者の数は全国で200件未満であり、営業実績もわずかである。労働者派遣事業を規制する法律は先進国の中で最も緩いが、派遣労働者を保護するために労働協約による規制が厳しくい。 ○ドイツでは1994年8月よりの民営職業紹介事業が合法化されたが、民間業者は失業者よりも転職者にたいする職業紹介に傾斜しており、失業者対策としては依然として公的職業紹介事業の役割が大きい。また企業が労働者を採用する際に、労働者派遣企業から派遣労働者として受入れて、その中から採用条件に合致した者を正規雇用に切り換える方法が取られており、労働者派遣事業がしばしば労働者を採用する際の試用期間として利用されている。
|