以下の点を整理できた。第1に、日本における品質の定義は、製品仕様の安定、バラツキの管理、不良の抑制など統計的品質管理(SQC)基準を満たすことを第1段階とし、顧客ニーズの充足を基準とする第2段階を今日では主としている。これら2つの基準を達成するために日本企業の全社的品質管理(TQC)が位置づけられており、その無限の集団責任体制という性格が「人海戦術」をもたらしやすい。第2に、日本の提案活動は全員参加を要請し、企業(または事業所)全体としての小改善の量的積み上げによる「累積効果」あるいは「改善活動へ取り組む態度」が重視されている。この点、提案の主体である個人が落ちこぼれないようにする補完策としてサークル活動(小集団活動)が機能している。第3に、品質管理(QC)活動を重視する際、質的成果に対応する「量的成果」を、1960年代半ばから70年頃に見いだすことはできていない。日本の提案活動が件数面で活発になったのは、QC活動などと一体化する第1次石油危機以降、あるいは79年以降である。提案件数は1975年頃から80年前半に激増し、80年代中葉ないし後半に量的拡大から質的向上への転換が図られた。第4に、日本型品質管理の評価について、作業者の高密度の関与・参画を要求するとか、人的努力に多くを依存するシステムという評価(あるいは「ストレスによる管理」という指摘)がある。つまり、「担当者の緊張と努力の継続」で品質が実現していたが「同じ結果をもっと要領良く」する必要がある。
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