説得とパブリック・アクセプタンス関連文献を入手し先行研究のサーベイを行い、理論モデルの構築を模索した。また、私のモデルについてパブリック・チョイス研究会の中心メンバーと議論を行った。こうした今年度の研究で、以下のような有益な知見を得た。 1.政策決定過程における説得の成功確率は、説得者が被説得者の行動様式をどのように予測するかに依存する。 2.政策決定過程における説得は、一方的なものではなく相互的なものである。 3.パブリック・アクセプタンスは、「合意の調達」という表現と同値なのかどうかを明確にする必要がある。 4.政策決定過程における説得は、カネ・チカラ・コトバのいずれかかその組み合わせでなされる。 5.説得やパブリック・アクセプタンスにとって非常に重要な点は、説得活動の予算制約である。もし予算制約がないならば、ほとんどの場合、説得の成功確率は1に限りなく近くパブリック・アクセプタンスも容易に得やすくなる。 6.ロールズの「無知のヴェール」やブキャナンのいう「不確実性のヴェール」に加え、「不確定性のヴェール」という新たな選択環境も考察する意義がある。 今後、研究をさらに展開するためには、こうして新たに得られた知見をより明確にするように理論モデルを改訂しつつ、理論モデルの仮説検定や種々のシミュレーションを実施する必要がある。
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