本研究の目的は、ある社会ないしプロジェクトを推進しようとしているグループが、どのような説得を行い国民一般の同意を取り付けようとするのか、また、いかなる働きかけや条件のもとでそうした同意が得られやすくなるのかについて、説得との関連でパブリック・アクセプタンスの概念を定式化し理論的かつ実証的に解明することであった。 本年度は、昨年度に引き続き理論モデルの開発と改訂を行いつつ、環境経済学の専門家である植田和弘京都大学教授やアメリカの公共選択研究センターのD.Fand博士ら4人の研究者から政策の政治的受容に関するそれぞれの専門的知見を得て、理論モデルを完成させた。このモデル作成に当たり必要な関連文献については、研究補助者に入手・整理作業をしてもらった。 当初の研究計画では、平成7年3月にアメリカのThe Public Choice Societyの1995年大会で理論モデルを学会報告する予定だったが、資料等の入手が遅れ果たせなかった。本年度の成果である理論モデルは、1996年4月12-14日テキサス州ヒューストンで開催されるThe annual meetings of the Public Choice Society and the Economic Science Associationの大会、及び5月25-26日関西大学で開催される日本経済政策学会において、本研究テーマで学会報告することになっている。 理論モデルの学会報告が1年遅れたため、成田空港・原発・環境税などの事例を取り上げ実証的に理論モデルを適用する作業が遅れている。現時点では理論モデルだけを公表し、このモデルの現実への適用は学会報告のコメントを参考にした後に追加公表することにしたい。
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