本研究の目的は、ある社会で特定の政策ないしプロジェクトを推進しようとしているグループが、どのような説得を行い国民一般の同意を取り付けようとするのか、また、いかなる働きかけや条件のもとでそうした同意が得られやすくなるのかについて、説得との関連でパブリック・アクセプタンスの概念を定式化し理論的かつ実証的に解明することであった。 説得とパブリック・アクセプタンスに関する図書・雑誌等の文献を入手整理し、専門家の知見を得つつ、理論モデルを構築した。理論モデルを構築する際に得られた成果の一部は、雑誌論文「総合政策と公共選択」の中で取り入れられた。さらに理論モデルの英文論文を仕上げて、平成8年4月12-14日テキサス州ヒューストンで開催されたThe annual meetings of the Public Choice Society and the Economic Science Associationで学会報告した。この学会報告では数多くの有益なコメントと示唆を得た。また来る5月25-26日関西大学で開催される日本経済政策学会においても本テーマで報告することになっている。 理論モデルの学会報告が計画よりも1年遅れたため、成田空港・原発・環境税などの事例を取り上げ実証的に理論モデルを適用することが遅れている。理論モデルの現実への適用は、学会報告のコメント等を参考にした後に追加公表することにしたい。 本研究の大きな成果の一つは、意見が分かれる政策問題をめぐる意思決定過程において、政策実施について同意を取り付ける説得活動と一般国民の受容を考察することが極めて重要な政策研究の一つであることを明示したことである。
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