本研究の目的は、航空規制緩和時代における空港の役割変化が、地域経営戦略に及ぼす影響を実証的に研究することである。平成6年度と平成7年度の2年間においては、文献研究および地域振興計画の核として空港整備を位置づけている地域(北海道・千歳市、福岡県、広島県、愛知県、大阪府など)の実態調査を基に、以下の論点を中心に研究をすすめた。つまり、日本における航空規制緩和の特殊性、平成不況と急速に進展するグローバリゼーションの影響による地域経済の空洞化、空港整備および周辺開発の事業主体のあり方などを明確にした上で、情報ネットワークの拠点としての空港が21世紀の地域経営戦略におよぼす影響を実証的に研究しようとした。この研究過程は、阪神大震災等に起因する交通混乱などにより十分に遂行することはできなかったが、以下のような知見を得た。まず、日本の空港容量の制約が航空規制緩和の特徴性を形成する原因となっていること。そのことが同時に、地方空港の国際化をすすめ地域経済を世界経済とドラスティックに結びつけ、空港間競争を媒介として、地域間競争をより激化する要因となっていること。その一方で、国内的には大都市と地方との格差が依然として大きいこと。それは、情報ネットワークの拠点として空港をとらえた場合、大都市圏の拠点空港と地方空港の機能の差、それを支える後背地の政治経済力の差によるものであること。また、後背地の政治経済力の差は、空港整備システムの差としても現れるということ。以上、5点であるが、今後、空港ネットワークを情報ネットワークとしての視点から促えなおし、研究を深めていく所存である。さらに、各地の事例を研究する過程において、空港を核とした地域振興を考える場合に、「空港づくりはまちづくり」という共生の視点にたった地域での合意形成の問題についても、地方分権を含めて問いなおす必要性を感じている。
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