1.本研究の目的は、ドイツに焦点を合わせながら戦後ヨーロッパ経済空間の統合と分化の緊張関係を総体的に把握することにあり、第二年目も、まず第一年目のinterregとEuregioに関する分析作業を続行した。とくにライン河の支流モーゼル川とザ-ル川にまたがるCOMREGIO(Kommunale Arbeitsgemeinschaft der GroBregion Saar LorLuxRheinlandPfalz)の資料の分析により、これが一つの原経済圏の存在を示していることをほぼ突き止めることができた。ライン河水系を河川軸とする原経済圏の分布を具体的に明らかにする点で、一歩進みえたことは今年度の収穫であった。 2.オーストリアがEUに加盟したことにより、ド-ナウ河流域がヨーロッパの東西軸としての重要性を増している。その点で、1992年のマイン・ド-ナウ運河の完成は画期的意義を持つ。そこで同運河の建設に当ってきたライン・マイン・ド-ナウ株式会社(RMD ミュンヘン)の経営史的分析を施すことにより、第一次大戦後および第二次大戦後のド-ナウ河の地政学的意義を、新しい観点から明らかにすることができた。また、RMDは水力発電所の建設・経営にも当ってきた電力会社であり、RMDの経営史的分析を通してヨーロッパ電力供給網の構築に関する分析の手がかりを得ることができた。 3.ドイツ経済の空間構造については、第二次大戦後の連合軍によるドイツ分割占領と、1990年の「ドイツ統一」とを対比して、東西ドイツそれぞれの内部的地域分化と東ヨーロッパの西ヨーロッパ化の動きとが密接に関連していることを、かなりの程度に明らかにすることができた。
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