研究概要 |
技術の制度化を端的にいえば、一つには高等研究教育機関(総合大学理工学部、工科大学、研究所など)の発展・展開にみることができる。またもう一つは、人間と技術の関係を比較文明学的に探り、人口・食糧・エネルギーを確保しつつも環境破壊・汚染のない技術文明の構築をはかる試行錯誤の歩みにみることができる。 1)日本および世界の今日の「大学問題」の根底には制度化の問題がある。約120年前、19世紀末ドイツには、すでに政治・経済・社会の問題として深刻な様相を呈しはじめていた。技術の制度化と社会の、すなわち高等研究教育機関の社会問題とは大略:(1)科学技術研究の装置の巨大化と巨額化,(2)科学技術そのものの社会的認知の拡大(発明発見に携わる職業=科学技術者の社会的地位の向上),(3)((2)と並行して)学生数および大学(新設)数の増加・教育のマスプロ化・研究者の研究以外の職務の増大、などがもたらされた。100年前と今日、ドイツの経験が日米欧そして世界へ与える示唆は多い。 2)社会経済史的にみれば、冷戦終焉後の世界の大国・中核国はほとんどすべて、民族問題や貿易赤字・金融通貨問題を主とする「国内」問題に目を向けている。そのため、19世紀後半から世紀末に始まった技術(特許・工業所有権を主とする)の「国際」的な制度化の流れがここに来て足ぶみ状態にある。人口・食糧・エネルギー・環境のいずれも、技術とその国際的制度化なしには進展しない。地方分権を基軸とし(EU統合のモデルとなった)連邦制をうまく運用しているドイツを参考に、技術の制度化を含む現代文明の方向をさぐる研究が急がれている。
|