本研究の目的は、バブル経済と金融政策の動学メカニズムを解明することであった。この目的のために構築した金融部門を明示的に含むマクロ動学モデルを使った分析によって次のような成果が得られた。 1.バブル経済の現象を、部分均衡論的・ミクロ経済学的観点からではなく、動学的一般均衡モデルをつかってマクロ経済現象として解明することができた。 2.金融政策がバブル経済を引き起こす動学的波及過程を金融仲介コストの観点から理論的に示すことができた。特に、金融政策がいかに民間銀行の貸出行動を変化させることによってマクロ動学に影響を与えることができるかが明らかになった。 3.金融緩和政策は金融仲介コストを減少させ、金融引締め政策は金融仲介コストを増大させることによって、マクロ経済に「生産性ショック」と同様な動学的効果、特にバブル経済と呼ばれるマクロ経済現象を発生させる過程が明かになった。 4.この金融仲介コストのメカニズムによって、金融政策の動学的影響のみならず金融危機がマクロ動学に与える影響ならびに波及効果も解明できた。 5.バブル経済を防ぐための金融政策の役割として次のような結論が得られた。すなわち、金融政策は銀行部門における一時的ショックを相殺して金融仲介コストを均衡水準に維持することを目標とすべきである。そのような金融政策によって、マクロ経済を均衡成長経路に乗せることができる。 6.以上の研究成果をまとめた論文をレフリー付き学術雑誌へ投稿中である。
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