1.日本の貿易取引の決済に使われる自国通貨の比率は、他の主要諸国に比べてかなり低い。しかし、日本の対アジア貿易に関しては円建て比率が急速に高まっている。しかし、アジア間貿易を見ると、現地通貨もしくは米ドルによる決済が多く、円が決済通貨になっている例は少ない。これは、この地域のアメリカに対する貿易上の依存度が未だ大きいためであると考えられる。 2.日本を除くアジア諸国の外貨準備に占める円の構成比は、米ドルの構成比が減少した1980年半ばにはかなり上昇したものの、近年では低下し米ドルの構成比が再び上昇しつつある。アジアの準備通貨は多様化の方向に進んでいると言えるが、マルクや円が米ドルに代わる程のウェートを占めるにはまだかなり時間が必要である。 3.国際通貨としての円の地位は上昇しつつあるが、なだその地位は米ドルに遠く及ばない。そのことは、東京を除くアジアの主要な外国為替市場である香港とシンガポールの外国為替取引の通貨構成比にも反映されている。円の地位はマルクに比べても低い。 4.国際通貨としての円の地位がそれほど上昇していない理由は、日本の貿易構造や日本企業の価格設定行動の他に、円資金を運用するための短期金融市場の発達がアメリカに比べて立ち後れていることが挙げられる。また、バブルの崩壊に伴い日本の金融機関の国際金融業務が縮小していたことも重要な要因であった。 5.双子の赤字を抱え、外国からの資本輸入に依存しているアメリカの通貨である米ドルが、国際通貨としての地位を依然として保っているということは、国際金融の不安定性を高めている要因の1つである。
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