本研究の目的は、近年次第に重要性が増しつつある円市場としての東京国際金融市場の役割および国際通貨として円の果たしている役割を、1980年代における国際金融市場・資本市場の多極化と関連させつつ、主として制度的および歴史的側面から解明することである。そこで、本研究ではまず、1980年代における国際金融・資本市場の多極化=変質を、国際金融・資本市場の三極化として把握したうえで検討する。ついで、こうした多極化=変質が進展した理由をアメリカ金融市場の内部的な構造変化に即して検出する。次に、こうした多極化=変質を生み出したもう一方の要因、つまりアメリカからみた外部的要因を、日本の側から、世界最大の資本輸出国=資金の出し手という側面と金融仲介者という側面の2点を重視し検討する。さらに、こうした変質が、国際金融市場の安定化をもたらしている訳ではなく、むしろその不安定性を増幅させており、その一主体の位置に円があることを明らかにする。 これまで、国際金融市場における円取引の実態、国際通貨としての円の役割については必ずしも十分明らかにはされてこなかったが、本研究は、こうした視点から、すなわちその制度形・歴史的特徴を明らかにするという視点から、国際金融市場における円の位置を確定していく作業として位置付けられる。
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