研究概要 |
本研究の目的は、日本を中心にした国際経済取引の地域化の程度を検討することにある。 この課題に沿って、平成7年度においては、平成6年度の研究をさらに発展させ、いくつかの具体的な実証研究を行い、4本の論文にまとめ上げた。まず第1に、日本とその貿易相手国(40数ケ国)との間の輸出入貿易と直接投資の相互連関を「重力モデル」を用いて分析し、“Are Trade and Investment Substitutes or Complements?: An Empirical Analysis of Japanese Manufacturing Industries"(Institute of Social Science Discussion Paper Series No.F-50,October 1995,University of Tokyo)および“Trade Imbalances and Japanese Foreign Direct Investment:Bilateral and Triangular Issues"(いずれも浦田秀次郎氏と共著)という論文を書いた。これらの論文では、日本の貿易フローと直接投資フローの間に統計的に有意かつプラスの相互連関が存在すること、日本の海外直接投資と投資受入れ国の対米輸出との間にはいくつかの重要な産業において統計的に有意かつプラスの相関が存在することが確認された。第2に、東アジア諸国におけるマクロ経済政策ショックが域内でどのような相関パターンをもつかを分析し、「アジア太平洋地域におけるマクロ経済政策の相互依存」(奥村綱雄氏との共著)という論文をまとめた。この論文では、いくつかの東アジア諸国のマクロ経済政策ショックが日本やアメリカのショックの影響を受けていること、シンガポールとASEAN各国との間のマクロ経済ショックの相関が強いことが確認された。第3に、東アジアにおける通貨地域の形成、および基軸通貨の選択の問題をとりあつかった論文「通貨地域の形成と基軸通貨の選択-複数通貨体制の展望」を書いた。この論文では、東アジアにおいて、日本円が基軸通貨として機能する可能性はさしあたり小さいが、日本と東アジア各国との間の貿易・直接投資のリンケージが深まれば、各国の為替政策における円の重要性は高まることが確認された。
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